
紀州犬の基礎情報
・日本語表記:紀州犬
・英語表記:Kishu
・原産地:日本
・発生:自然発生
・種類:原始的な犬/スピッツ
・サイズ:中型犬(46〜55cm)
・体重:オス13kg~27kg、メス13kg~27kg
紀州犬の性格・特徴
紀州犬は、紀州半島を中心に飼育されていた犬と、オオカミの交配種を祖先犬にもつ、猟犬として活躍した犬種です。
紀州犬の性格
紀州犬は、「忠誠心が高い」「忍耐強い」「まじめ」な性格をしています。
知的で賢く好奇心が旺盛で、飼い主や家族にのみ従い愛情を示す犬種です。室内飼いで常に人との関わりを持って育てることによって、穏やかな気質になるようです。
個体によっては、他人に対し不信感や警戒心を抱き、攻撃的になることもあるため、社会性をしっかり身につけてあげましょう。
子犬の頃はやんちゃですが、成長とともに落ち着いていきます。
紀州犬の特徴
紀州犬は、「鼻筋の通った精悍な顔」「ピンと立った三角の立ち耳」「立派な巻き尾」をしています。
均整のとれた筋肉のよく発達した体をしており、骨格も頑丈で引き締まっています。猟犬として活躍していたこともあり、脚は筋肉質で力強く、ホック(くるぶし)もしっかりしています。
山岳地帯で生活していたことから、指趾(前後趾の指)はよくアーチし、堅く握り、パッド(肉球)は厚くて弾力があります。爪も堅く頑丈です。
首もたくましく、背中は真っすぐで力強いです。腰は幅広く、胸は深くあばらは適度に張っています。
室内外の飼い方で気質が変わる
人懐っこさや、落ち着きは、室内飼いか、室外飼いで異なり、室内飼いの場合、落ち着いた気質に育ち、遊び好きで人懐っこい性格になります。
室外で飼育する場合は、警戒心が強くなりやすく飼い主や家族には愛情深く接してくれますが、他人に対しては警戒心をあらわにする、内弁慶な性格になります。番犬としての適性は高いです。
なるべく人通りのある道から、犬舎を離して安心して生活できる環境をつくってあげましょう。
室内で飼育しても、留守番が長いと信頼関係が築きにくいです。いつでも家族の気配を感じられる環境で飼育すると、落ち着きのある家庭犬になります。

紀州犬の毛色・目の色
紀州犬の被毛は、上毛が堅い直毛で、下毛はやわらかく密に生えているダブルコートです。頬と尾の毛はやや長く、顔は優しい雰囲気に、尾は立派な巻き尾をつくっています。
毛色は、白、赤、胡麻があります。
ほとんどは、白い被毛をしており、これはイノシシ猟をしていた時に、紀州犬をイノシシと間違えて撃つことがないように、目立つ白い被毛が好まれたからといわれています。
換毛期は非常に抜け毛が多く、1日2回のブラッシングが必要です。スリッカーブラシで余計な下毛を取り除き、コームで整えてあげます。
シャンプーは、1〜2カ月に1回を目安に行いましょう。
紀州犬の目は、暗褐色です。両目の間隔は適度で、目尻が少し吊り上がり凛々しい印象があります。紀州犬の目は不等辺三角形の形をしており、ハマグリ型と表現されることがあります。
紀州犬の鳴き声
紀州犬は、警戒心が強いため、自分のテリトリーにいる時は、吠えやすい犬種です。
しかし、室内飼いをしている場合、無駄吠えをまったくしないこともあるようですので、安心できる環境で育ったり、しつけや訓練が適切に行われているかどうかで違いがあります。
室外で飼育すると、警戒心が育ちやすく、飼い主や家族との触れ合う時間も減ってしまうため、番犬としての役割が強くなります。
室外飼育でも、吠えないようにしたい場合には、普段紀州犬が過ごす犬舎を、人通りのある道から離すといいでしょう。
運動不足だったり、一人でいる時間が長いとストレスから無駄吠えや破壊行動などの問題行動が増えやすいです。
紀州犬は日本の気候に耐えられる体質のため、室外飼育が可能な犬種です。
しかし、吠えにくい犬種にしたい場合には、室内飼育で、常に家族の気配を感じられる環境で育ててあげることをおすすめします。
紀州犬の寿命・病気
紀州犬の寿命は、14歳前後で、比較的健康で長生きな犬種です。
本犬種の寿命は、飼育環境によることが大きいため、刺激の少ない室内飼育の方が長生きする傾向にあります。
アトピー性皮膚炎:アレルゲンに対して体が反応し、皮膚にかゆみなどの症状を引き起こす慢性疾患。アトピー性皮膚炎は、ダニや花粉などの環境中のアレルゲンに対する過剰な免疫反応であり、遺伝的に発症しやすい疾患です。
比較的若い年齢の時に発症し、完治することはないため、かゆみなどの症状をコントロールしながら治療を続ける必要があります。良くなったり、悪くなったりを繰り返し、暑さによる皮膚の蒸れによって悪化しやすいです。
冬場も暖房をつけすぎると、悪化する可能性があります。皮膚が蒸れないように、こまめにブラッシングを行うようにしましょう。
白内障:水晶体が白く濁り視力に影響を与える疾患。初期の段階では、自覚症状はなく、飼い主も気がつくことができません。動物病院を受診した際に、気になる症状がなくても、目を検査してもらうようにするといいでしょう。
徐々に視力が低下し、なにかにつまずいたり、壁づたいに歩くようになります。早期に発見することで、点眼薬などによって症状の進行を遅らせることができます。
すでに重症の場合には、濁った水晶体を取り出し、人工レンズを入れる外科手術を行うこともあります。
高齢や全身症状が悪いと、全身麻酔をかけられず、外科手術が行えないため、早期発見早期治療が大切な疾患です。
緑内障:眼圧が上がることで視神経を圧迫してしまう疾患。緑内障は痛みを伴うため、元気がなくなる、涙が出る、触られることを嫌がる、などの症状が特徴です。
症状が進むと、結膜の充血や角膜の濁りがみられます。眼圧が上昇する病気が原因で発症することもありますが、紀州犬は遺伝的に緑内障になりやすく、予防が難しいです。
心室中隔欠症:心臓の右心室と左心室の間を隔てる筋肉の壁に穴が空いている疾患。紀州犬は、先天的に心室中隔欠損症を罹患していることがあります。
予防することは難しいため、定期的に健康診断を行うことが大切です。

紀州犬のしつけ・飼い方
紀州犬がどのような成犬になるかは、飼い主や家族の触れ合い方、生活環境が大きく関与しています。
リーダーシップを発揮してしつけることで多くを覚える
紀州犬は賢く、理解力に優れた犬種です。飼い主の気持ちを察する能力も高いため、しつけは行いやすいといわれています。
しかし、そのためには飼い主がこの犬種と信頼関係を結び、リーダーと認められる必要があります。普段触れ合う時間が短いにも関わらず、しつけをしようとしても、いうことをきかないでしょう。
室内飼いで常に触れ合う環境を整えている方が、信頼関係を築きやすく、結果しつけもしやすいでしょう。
室外で飼育する場合は、欠かさず散歩を行いコミュニケーションをとるようにしてください。
元猟犬のスタミナあふれる犬種
紀州犬はイノシシを狩るために、山を駆け回っていた犬種です。
スタミナにあふれ運動能力が高いため、筋肉質な体を維持するためにも、運動は欠かさず行うようにしましょう。
郊外に住んでいる場合には、自然を感じられる場所を散歩すると喜ぶでしょう。散歩は1日2回の1時間ずつ行うようにします。
運動不足でストレスが溜まると、無駄吠えや破壊行動などの問題行動をすることがありますので、十分な運動をさせてあげましょう。
非常に足が早いため、散歩中やドッグランで遊んでいる最中の脱走には注意してください。
引く力が強いため散歩中のケガに注意
紀州犬は、非常に力が強く、引く力もあるため、リードトレーニングが欠かせません。
リードトレーニングが不十分なまま成犬になると、散歩のたびに引っ張られ、転んでケガをしたり、ふとした時にリードが外れ逃げ出してしまうことがあります。
子犬の時から、散歩の時は、主人の歩くペースに合わせて歩き、リードを引っ張ることがないように訓練しましょう。

紀州犬の歴史
紀州犬の起源は、現在の和歌山県から三重県にまたがる「紀伊国」に生息していた土着犬でした。
その歴史は古く紀元前から存在していたともいわれています。この地域では、土着犬を猟に用いるために育てていました。
ウサギやタヌキシカなど、狩りをする獣に対して1種類の猟犬を育てる風習があり、イノシシ猟のために育てられていたのが、紀州犬でした。
紀州は山岳地帯で交通の便が悪かったため、紀州犬が他の地域に広まることはありませんでした。
当時の土着犬には「那智犬」「太地犬」「熊野犬」「日高犬」「奥吉野」などが存在しており、日本犬保存会に「紀州犬」として登録されることをきっかけに、これらの犬をひとつの犬種のまとめることになりました。
その後1934年には紀州犬は天然記念物として指定され、保存の対象となりました。
紀州犬にはさまざまな言い伝えがあります。例えば、弘法大師(空海)の修行中に道案内をしたのが紀州犬であった。猟師に助けられた、傷を負ったオオカミがそのお礼として、自分の子を授けたのが紀州犬の始まりであった、などです。
紀州犬の値段価格
紀州犬は、現在でも猟犬として活躍していることもありますが、近年では家庭犬としての需要の高まりから、以前よりも温和な性格の個体が増えてきています。
日本国内でも一定の人気があり、日本犬としては、柴犬についで飼育数が多いのが紀州犬です。
アメリカを中心とした海外においても、日本犬人気の高まりから、紀州犬も輸出されています。
子犬の価格は15万円程度ですが、親犬の血統やドッグショーでの成績によっては30万円を超えることも珍しくない犬種です。
ブリーダーは三重県に多く、他には関西にも存在しています。
紀州犬は飼い主との信頼関係が非常に大切です。迎え入れた日からたくさん触れ合い信頼関係を築いてください。
紀州犬の飼育について検討されている方は、ぜひ本記事を参考にしていただければと思います。