ピレニアン・マスティフの基礎情報
・日本語表記:ピレニアン・マスティフ
・英語表記:Pyrenean Mastiff
・原産地:スペイン
・発生:人為的発生
・種類:使役犬
・サイズ:大型犬(72〜81cm)
・体重:オス54kg~70kg、メス54kg~70kg
ピレニアン・マスティフの性格・特徴
ピレニアン・マスティフは、大変訓練が入り易き、現在でも農園での護衛犬として活躍しています。
ピレニアン・マスティフの性格
ピレニアン・マスティフは、優しく従順で、気高く知的な犬種です。
見知らぬ人に対しても物怖じすることなく、決して逃げ出したり、威嚇して吠えることはありません。他の犬に対しても、気立てが良く、自分に力があることをよくわかっているため、寛容に接することができます。
小さな動物や、家族の中の子供にも優しく接することができます。性格に個体差はありますが、基本的には雄の方がやんちゃで甘えん坊の傾向が強いようです。
子犬の時期は好奇心が旺盛で活発です。成犬になるにつれて落ち着き威厳のあるたたずまいになります。
ピレニアン・マスティフの特徴
ピレニアン・マスティフは、大変大きな体をしていますが、均整とバランスが取れた体格です。
体高は体長に比べてわずかに短く、スカルとマズルの比率は5:4です。中庸なプロポーションで、重々しさはなく、力強く筋肉質です。
グレート・ピレニーズと似ているといわれることが多いですが、大きな違いはピレニアン・マスティフの方が頭部が大きくがっしりしていて、毛色がホワイト一色ではないことです。
顔つきは、獰猛ではなく優しい印象を与えます。胸は広めで、足も超大型犬らしく太くしっかりしています。耳は垂れ耳で、尻尾はふさふさとしていて豊富は被毛です。
気質にはガードドッグの名残がある
ピレニアン・マスティフは、普段は温厚で小さいものや弱いものに優しい性格ですが、護衛犬・ガードドッグとして働いていた名残が気質に残っています。
飼い主や、その家族、自分自身に対して危険が及ぶと感じた時には、驚くほど俊敏に動き、この犬種本来の力強さを発揮します。
飼い主は、普段見せる穏やかな姿だけではなく、こうした気質についても認識し、ピレニアン・マスティフが、過度な警戒心を抱かず、安心して生活できる環境を整えてあげましょう。
また同時に、飼い主はしっかりとリーダーシップをとり、この犬種にリーダーと思われる信頼関係を築く必要があります。
ピレニアン・マスティフの毛色・目の色
ピレニアン・マスティフの毛は、密生しており、厚く適度な毛の長さをしています。
ジャパンケネルクラブによると、トップライン(横から見た上側のライン)の中間あたりで測った時の理想的な毛の長さは6〜9cmといわれています。毛質は、剛毛でなければならず、羊毛状ではありません。
ピレニアン・マスティフの毛色は、地色はホワイトで、はっきりとしたマスクがみられます。
耳には常に斑があり、もっとも理想的な毛色は、ピュア・ホワイトか、スノー・ホワイトに適度なグレーの斑、ゴールデン・イエローの斑、ブラウンの斑、ブラックの斑、サンディーの斑、マーブルの斑となっています。
毛量が多く、ダブルコートですので、抜け毛が多いです。ブラッシングは、毎日行いましょう。
目は小さく、アーモンド形をしており、色はダークなヘーゼルが好ましいとされています。まぶたの色はブラックで、下まぶたが少しゆるみ結膜が少し見えていることが特徴的です。
ピレニアン・マスティフの鳴き声
ピレニアン・マスティフの鳴き声は、重々しく低いです。
無駄吠えはほぼありませんが、飼い主を守る時には威嚇するように吠えることがあります。しつけや訓練が不十分である場合や、飼い主をリーダーとして認識していない時には、吠えることが増えてしまいます。
独立心が旺盛のため、飼い主を頼りないと感じると、自分がリーダーになろうとすることがあります。飼い主はしっかりと、服従訓練を行い、この犬種が安心して生活できるようにしてあげましょう。
また、犬舎を通りがよく見える場所に設置すると、番犬の気質から、気になってしまい落ち着かない可能性があります。
屋外で飼育する場合には、安心して過ごせる場所に犬舎を設置してあげましょう。
ピレニアン・マスティフの寿命・病気
ピレニアン・マスティフの寿命は、10歳〜13前後で他の大型犬の寿命と比較すると少し長い寿命です。
ピレニアン・マスティフが比較的長寿な理由には、遺伝性疾患や命に関わる疾患の発症率が低いことが考えられます。
しかし、マスティフ系は熱中症リスクが高いため、同様に注意が必要な犬種です。
股関節形成不全:股関節が噛み合わないことが原因で関節が炎症を起こす疾患。この疾患の原因は遺伝性であることが多いですが、成長期に過度な運動により関節に負荷がかかりすぎることも原因と考えられています。
ピレニアン・マスティフは成犬になると穏やかで、普段は動きものんびりしていますが、子犬の時期は好奇心旺盛で活発です。
子犬の時期に過度な運動をすると、関節に負荷がかかり、痛めてしまう可能性があるため、注意が必要です。室内で飼育する場合には、必ず、滑り止めのシートを設置しましょう。
胃捻転:胃が捻転しショックなどの症状を起こす疾患。胃に溜まったガスがなんらかの原因で拡張し、胃がねじれてしまいます。
そのまま放置すると、ガスが周りの血管を圧迫してしまい、最悪の場合、正常に血液が循環されなくなってしまい、胃も壊死してしまう恐れがある怖い疾患です。
ピレニアン・マスティフは、体が大きいだけではなく、胸が広い体型のため、胃捻転を起こしやすいです。夕食後に発症することが多く、食事後にすぐに運動させないようにしましょう。
胃捻転が起きると、すぐに処置を行わなければ命に関わります。予防には、食事の回数を3回に分ける、早食いを防ぐ食器を使う、食器の高さを上げる、食事後は安静にさせるなどがあります。
膿皮症:細菌感染によって皮膚に炎症が起こる疾患。ピレニアン・マスティフは、被毛が豊富なため、皮膚が蒸れやすい特徴があります。とくに、換毛期は抜け毛が激しい時期ですが、ブラッシングを怠ると死毛がたまり蒸れやすくなります。
毎日のブラッシングで、皮膚の換気をよくし、皮膚状態も確認してあげましょう。体を擦り付けるなどの様子がみられたら、痒みが生じている可能性がありますので、動物病院を受診しましょう。
ピレニアン・マスティフのしつけ・飼い方
ピレニアン・マスティフは、昔から人に仕えてきた犬種ですので素晴らしい家族の一員となってくれます。
この犬種との生活をより良くするために、飼い方をご紹介します。
毎日数時間の散歩
ピレニアン・マスティフは、体力があり豊富な運動量を必要としている犬種です。
運動の種類は、飛んだり跳ねたりする激しい運動ではなく、ゆっくりと時間をかけて長時間行う散歩が適しています。
リードトレーニングが完了すれば、子供でもリードを持って散歩に行くことも可能ですが、念の為、丈夫なリードや首輪を使いましょう。
階段など、段差のあるところよりも芝生や砂、砂利など膝や肘、股関節に負担がかからないお散歩コースを見つけてみてください。
リードトレーニングは、リードを引っ張ることなく、飼い主のペースに合わせて歩くという服従訓練の一つです。飼い主がしっかり学び体が大きくなる前に実践する必要があります。
命に関わる熱中症に十分注意して
マスティフ系は、熱中症になるリスクが高いといわれており、ピレニアン・マスティフも同様に注意が必要です。特に被毛が密生して厚いため、夏場は熱が大変こもりやすいです。
夏場は、空調の管理された室内で飼育してあげることが理想的です。
室外でしか飼育できない場合は、日陰を作ってあげたり、犬舎を涼しくできる工夫をできる限りしてあげましょう。いつでも新鮮な水がたっぷりと飲めるようにしてあげることも大切です。
夏場の散歩は、涼しい時間に短めに行うといいでしょう。
ブラッシングの時は、上毛用と下毛用にブラシをうまく使い分ける必要があります。とくに夏場は、下毛を十分に取り除いて換気を良くしてあげる必要があります。
金属製のコーム状のブラシで、毎日ブラッシングしてあげます。また、よだれが多い犬種のため、口周りもこまめに拭き清潔に保ってあげましょう。
迎え入れたらすぐにトレーニングを開始する
ピレニアン・マスティフは子犬でもパワフルで力があるため、すぐにトレーニングを開始しなければコントロールが難しくなります。
賢く、従順な気質なので、しつけや訓練が入りやすいですが、大型犬の訓練に慣れている方が飼い主には向いています。心配な場合は、訓練士に相談することをおすすめします。
散歩に行けるようになったら、リードトレーニングから始めるといいでしょう。しつけや訓練は、怒ったり怒鳴るようなやり方ではなく、たくさん褒める方法で行いましょう。
ピレニアン・マスティフの歴史
紀元前1000年頃、フェニキア人が交易を通じてチベットよりもたらされた、チベタン・マスティフがこの犬種の歴史の始まりとされています。
ピレニアン・マスティフは、気温の低い山地で暮らしたため、被毛は寒さに耐えられるように厚く長い毛を祖先犬より継承しました。
この犬種は、元来、主に羊をクマやオオカミから守るための護衛犬として使われたり、羊を季節ごとに別の放牧地へ移動させることの補助にも使われ、古くから人間に仕えて働いてきました。
1900年代にピレネー山脈のクマやオオカミが絶滅寸前まで頭数を減らしたことから、この犬種の仕事がなくなり、ピレニアン・マスティフは絶滅の危機に瀕していました。
しかし、スペインの保存会によって徐々に頭数が回復し、1982年に国際畜犬連盟FCI ( Fédération Cynologique Internationale ) 公認犬種として登録されるまでになります。
現在では、実用犬としての頭数は減りましたが、主にペットやショードッグとしても飼育されるようになりました。
今でも稀少な犬種ですが、超大型犬の威厳と穏やかな性格という魅力から、近年注目を浴びるようになってきた犬種です。
日本においては、2001年にオス1頭が輸入され、2002年にジャパンケネルクラブ登録1号犬となりました。
2頭の姉妹が続けて輸入され繁殖を行うことで、2003年子犬が生まれました。その後、この犬舎はスペイン保存会(CMPE)の日本支部として、承認を受けました。
ピレニアン・マスティフの値段価格
ピレニアン・マスティフは世界的にみても、いまだに稀少な犬種です。
日本にはスペインの保存協会から承認を受けた日本支部が存在していますので、飼育を希望している場合は、まずはこの犬舎を見学してみるといいでしょう。
ピレニアン・マスティフは、体は大きいですが、気質は家庭でも飼育しやすい犬種です。
この犬種の生涯を愛情を持って飼育できるように、ぜひ本記事を参考にしていただければと思います。