セント・バーナードの基礎情報
・日本語表記:セント・バーナード
・英語表記:St.Bernard
・原産地:スイス
・発生:自然発生
・種類:使役犬
・サイズ:大型犬(65~90cm)
・体重:オス50kg~91kg、メス50kg~91kg
セント・バーナードの性格・特徴
セント・バーナードは、あらゆる犬種の中で、最大級といわれる大きさの犬種で、体重は100kgを超えることもあります。
セント・バーナードの性格
セント・バーナードは、生まれつき人懐っこく、気性は穏やかなものから活発なものまでいます。優しい性格をしているため、子供とも安心して遊ばせることができます。
自分で考える力があり、責任感が強く与えられた仕事を果たそうとしてくれます。
アルプスの山という厳しい環境で遭難者を救助する仕事をしていたため、我慢強さや忍耐力があります。
大きな体に、甘えん坊というギャップに惹かれ愛好家になる人も多いです。用心深く注意深い、頑固な一面も持っています。
セント・バーナードの特徴
セント・バーナードは、体が大きくがっしりとしており、頭部が印象的で、注意深い表情をしています。
頭部は、力強く表情に富んでいます。スカルは幅広で力強くわずかに丸みを帯びています。
鼻はブラックで、幅広でスクエア型、マズルは短く均等な幅です。鼻筋はまっすぐで、わずかな溝があります。
体は、バランスが取れており、筋肉が発達しています。トップライン(横から見た上側ライン)は真っすぐで、腰に向かって水平です。下胸は適度の深く、肋骨はよく張っているが。樽胴ではありません。
遭難者を救助する救護犬として活躍
セント・バーナードは元々は農家に飼育される使役犬でしたが、聖ベルナール僧院に寄贈されたことをきっかけに救護犬としての道を開きました。
寒いさに強く、忍耐強い性格と、与えられた仕事を果たそうとする責任感から、数多くの遭難者を救助してきた実績があります。
バリーという名のセント・バーナードは、生涯に40人もの遭難者を救助し、その物語は各国で語り継がれています。
20世紀になると映画「ベートーベン」に主役に抜擢されたり、アニメ「アルプスの少女ハイジ」にも登場するなど、注目を浴び高い知名度を誇っている犬種です。
セント・バーナードの毛色・目の色
セント・バーナードには、ショートヘアードと、ロングヘアードの2種類がいます。
ショートヘアードは、上毛が密で短くボディに密着して寝ており粗毛で、下毛も豊富です。大腿には、適度な飾り毛があり、尾は豊富な被毛でおおわれています。
ロングヘアードでは上毛は飾り毛がなく、中くらいの長さの伏せた毛で、下毛は豊富です。頭部と耳の被毛は短く、大腿には十分な飾り毛が見られ、尾はふさふさしています。
毛色は、地色のホワイトにさまざまな大きさの赤みがかったブラウンの斑があり、背や側腹部は途切れない赤みがかったブラウンのブランケット(背と体側に毛布をかけたように広がる斑)がみられます。
抜け毛は多く、体が大きい分、ケアが大変です。
セント・バーナードの鳴き声
セント・バーナードは、温和で我慢強いことから吠えにくい犬種です。
攻撃性も低いことから、知らない犬や人を見かけても吠えることは少ないでしょう。しかし、子犬の頃からしつけや訓練を怠れば、無駄吠えをするようになってしまいます。
セント・バーナードは、体が大きい分、声も大きいため、吠えることで周りの人を怖がらせてしまう可能性もあることから、住宅地などで飼育する場合には、しっかりしつけをしましょう。
賢いことから、しつけはしやすい犬種ですが、飼い主が喜ぶことが好きな犬種なので、たくさん褒めながらしつけを行うとうまくいくでしょう。
セント・バーナードの寿命・病気
セント・バーナードの寿命は、8歳から10歳前後です。他の超大型犬と比較するとやや短命な犬種です。
股関節形成不全:股関節が正常に形成されず、歩行に異常が現れる疾患。大型犬に多い疾患ですが、その中でもセント・バーナードは注意が必要です。
腰を振るように歩く、うまく座れない、後ろ足がうまく使えないため跳ねるように歩くなどの症状があります。治療法としては、軽度であれば運動制限や体重管理に加え、鎮痛剤やレーザー療法を行うことになります。
重度になると、外科的手術を行うことになります。この疾患の原因は、遺伝性、肥満や関節に負担をかけるような激しい運動があります。セント・バーナードは、急速に体が大きくなるため、関節に負担がかかりやすいことから発症リスクが高いです。
子犬の頃に、過度な栄養摂取、激しい運動はさせないように気をつけましょう。
拡張型心筋症:心臓の筋肉に異常が起こり、心筋が薄くなることで、心臓が収縮する機能が著しく低下する疾患。症状としては、「元気がない」「体重減少」「食欲低下」などの症状があります。
循環不全によって、肺水腫を引き起こしている場合は呼吸困難を起こすことがあります。心筋症そのものを、治療することはできないため、血液を全身に送りやすくするための血管拡張薬や心臓の働きを強める強心剤などを投与し、循環不全を解消します。
前十字じん帯断裂:膝関節を構成するじん帯が断裂する疾患。前十字じん帯は脛骨が前に滑り出さないようにする役割があります。このじん帯が、部分的もしくは完全に切れてしまった症状をさします。
症状としては、関節に痛みや腫れが出てしまうことから、運動を嫌がったり、後ろ足を上に上げたままにしています。治療法は、関節が安定しているのであれば鎮痛剤を投与し体重管理を行うなど内科的治療を行います。
症状が重い場合は、外科的手術を行います。前十字じん帯は、体重を支える部分なので、適正体重を超え関節に負担をかけないようにしましょう。
セント・バーナードのしつけ・飼い方
セント・バーナードは賢く穏やかな気質のため、しつけや訓練がしやすい犬種です。しかし、体が大きいことから、家庭犬として飼育するためには、環境などを整える必要があります。
運動は得意ではない
セント・バーナードは、体力はありますが、運動はあまり得意ではありません。
激しい運動は、関節を痛めてしまうため注意も必要です。1日2回の1時間ずつのんびりと散歩に行きましょう。成犬になるとのそのそと歩くため、ノーリードでも問題ないくらい穏やかです。
しかし、力は強いですし、子犬でもすぐに体が大きくなりパワフルなため、小さいうちからリードトレーニングはしておいた方がいいでしょう。
やんちゃな子犬時代は注意
セント・バーナードはとても聡明で穏やかな犬種のため、しつけや訓練がしやすい犬種です。
飼い主がリーダーと認められれば問題ないでしょう。しかし、成犬になるまではやんちゃで、なんでも口に入れたり破壊してしまいます。
子犬でも体は大きく力も強いので注意が必要です。壊されて困るものや口に入れると危険なものは部屋に置かないようにしましょう。ハウスも木製のものよりも金属製の頑丈なものがよいでしょう。
家に迎え入れたらすぐにしつけや訓練をはじめましょう。セント・バーナードは食いしん坊なので、おやつのご褒美を使ったしつけが有効です。
しかし、あげすぎて太らせないように注意しましょう。
よだれはこまめに拭いて清潔に
セント・バーナードの特徴に、よだれの多さがあります。
鼻が低い犬種は、それだけ口周りの皮膚がたるんでしまうため、よだれが溜まりやすいです。セントバーナードも同様で、とくによだれが多い犬種です。
よだれをそのままにすると、ニオイの元になったり、口周りの毛が変色したり、皮膚炎になります。
よだれを減らしたり、無くす方法はありませんので、こまめにタオルで拭いてあげたり、よだれかけをつけてあげてもいいでしょう。
セント・バーナードの歴史
セント・バーナードの起源は、はっきりとはわかっていません。
祖先犬となったのは、ローマ帝国が、スイス侵攻の際に連れてきた軍用犬であるモロシア犬といわれています。
番犬や使役犬として働いていましたが、17世紀頃になると、アルプスの雪中でも歩き続ける体力と勇気に探索犬としての適性が見出され、改良されることになりました。
セント・バーナードの歴史を語る上で、欠かせないのが、聖ベルナール僧院の存在です。
聖ベルナール僧院は、イタリアとスイスの国境近くでアルプスの山間にあり、グラン・サン・ベルナール峠という交通の要所に立っていました。
冬になるとこの峠はマイナス30度積雪は20cmを超える場所で、馬を使うこともできませんでした。旅人たちが、この峠を越えるには歩く他なかったのです。
そうした中、旅人の中には遭難する人が出てきてしまいます。救助所になっていたのが聖ベルナール僧院で、救助犬の役割を果たしていたのが、セント・バーナードだったのです。セント・バーナードは、3世紀にわたって約2500人もの命を救ったといわれています。
19世紀初め頃に、セント・バーナードはイギリスへ渡ります。
この時、セント・バーナードは絶滅の危機に瀕していました。狭い地域で近親交配が繰り返されたため、遺伝性疾患が多発し、長く生きることができなくなっていたのです。
そこで生き残っていた、セント・バーナードとニューファランドが掛け合わされ、個体数を増やすことに成功します。
その結果、細身で短毛だった体は現在の大柄で長毛の姿へと変わっていくことになりました。1887年国際畜犬会議で正式にスイスの犬種として公認され、現在にいたっています。
セント・バーナードの値段価格
セント・バーナードは、世界的に有名な犬種ですが、大型犬を超えるほどの大きな体と力があるため、家庭犬として飼育している人は、それほど多くありません。
一般的なペットショップで見かけることはないでしょう。
しかし、セント・バーナードは大変魅力的な犬種のため、愛好家は多く、ブリーダーも多くはありませんが各地に存在しています。
子犬の価格は20万〜60万円で、血統書の有無や幼齢などで金額は変わります。
セント・バーナードは、大型犬の中でも大きい方なので、迎え入れた後も、餌代や病院代、シャンプーなど多くの費用がかかることを覚悟していなければなりません。
高齢期に動けなくなったときも、病院を受診できるように車もあった方がいいでしょう。
賢く穏やかで、家族をたくさんの笑顔にしてくれる犬種ですが、迎え入れた後も、しっかりと飼育できるように家族で全員で協力して飼育していきましょう。
体が大きく力もあることから、簡単には飼育できる犬種ではありませんが、大変魅力的な犬種です。ぜひ本記事を参考にセント・バーナードについて学んでいただければと思います。