土佐犬の基礎情報
・日本語表記:土佐犬
・英語表記:Tosa
・原産地:日本
・発生:人為的発生
・種類:使役犬
・サイズ:大型犬(50〜61cm)
・体重:オス30kg~90kg、メス30kg~90kg
土佐犬の性格・特徴
土佐犬は、日本で闘犬として作られた犬種で、「日本マスティフ」という別名も持っています。
土佐犬の性格
土佐犬は、飼い主には従順ですが、他の人に対しては心を許さず、疑い深い性格をしています。
縄張り意識が強く、番犬としては優秀ですが、他の犬と仲良くなるような気質ではありません。忍耐強く勇猛果敢で、攻撃的になると力が強いことからコントロールが難しいです。
子犬の頃から、しつけや訓練を行うことで家庭犬としての気質に近づく可能性はありますが、闘犬として作られた土佐犬のもともとの気質は簡単にはなくなりません。
土佐犬の特徴
威風堂々とした体格の頑健な大型犬です。筋肉質でしっかりとした骨格をもち、歩き方も力強さを感じさせます。
皮膚は噛まれても耐えられるように、大きなたるみがあることが特徴です。
頭部は大きく、ストップ(両目の間にある、スカルとマズルの接続部のくぼみ)ははっきりとしています。
耳は垂れ、被毛は短く、マズルは角ばっており、尾の付け根は太く、垂れ下がっています。小さめの体格の土佐犬は30kg程度ですが、大きい土佐犬は100kgを超えることがあります。
闘犬が残る日本で作られた土佐犬
闘犬は、ヨーロッパを中心とした動物愛護の先進国では、19世紀には禁止となりましたが、日本においては禁止されることはありませんでした。
そのため、土佐犬は繁殖計画の際に、家庭で飼育することを念頭においておらず、闘犬として強い性質かどうかが選定基準となっていました。
そうして作られた土佐犬は、家庭での飼育は難しく、実際に飼い主のしつけ不足や不注意から重大な咬傷事故がたびたび起きています。
愛好家や、育種家、関係者によって、正しい飼育管理方法の啓蒙が行われています。
土佐犬の毛色・目の色
土佐犬の被毛は短く密に生えており、毛質は堅いです。
下毛のないシングルコートのため、換毛期の抜け毛は少なく、被毛ケアが楽な犬種です。
しかし、日常的な抜け毛が無いわけではなく、短毛で堅い毛質のため、クッションなどに抜け毛が刺さりやすいことが特徴です。
また、シワが多いので、シワの間に汚れがたまらないように、お湯で濡らし固く絞ってタオルで拭いてあげましょう。
ブラッシングは、ラバーブラシを使うと皮膚のマッサージもでき、皮膚疾患を予防することができます。週に1回はブラッシングをしてあげましょう。
毛色は、レッド、フォーン、アプリコット、ブラック、ブリンドルが、ジャパンケネルクラブでは認められています。
胸部と足にみられる若干の白斑は許容されます。目はやや小さく、暗褐色で、威厳を示しています。
土佐犬の鳴き声
土佐犬の鳴き声は、野太く声量は大きいです。
普段は無駄吠えが少ない犬種ですが、運動不足や触れ合う時間が少ないとストレスが溜まり、無駄吠えなどの問題行動につながります。
番犬として使用されていたこともあり、強い縄張り意識がある犬種です。
そのため、屋外で飼育していて、檻から通りの人が見える場合、見知らぬ人や犬に対して吠え立てることがあるようです。
家族や飼い主に対しては、普段穏やかな姿を見せる土佐犬ですが、一度スイッチが入ると、攻撃的になり激しく吠えたてることがありますので、油断しないようにしましょう。
土佐犬の寿命・病気
土佐犬の寿命は、10歳〜12前後で他の大型犬の寿命と比較すると平均的です。
命に関わる疾患や、遺伝性の疾患は多くありません。毎日のケアで、長生きすることも可能な犬種です。
動物病院はなるべく子犬の時から同じところを受診し、獣医師に対して警戒心を抱かないように気をつけてあげましょう。
股関節形成不全:股関節が噛み合わないために関節が炎症を起こす疾患。土佐犬は成犬になるまでの成長期に、関節に過度な負荷がかかると、この疾患を発症しやすくなります。
闘犬としての気質が残っていることから、体を動かすことが好きな犬種ですが、成長期は気をつけてあげましょう。肥満も関節への負担になります。適正カロリーを知り、必要以上にフードをあげないようにしましょう。
胃捻転:胃が捻転しショックなどの症状を起こす疾患。大型犬に多い疾患で、体の大きな土佐犬にも注意が必要です。特に夕食後に発症することが多い疾患です。
原因は、食事後にすぐに運動させることなどがあります。発症すると、すぐに動物病院で処置を行わなければ、命に関わる疾患ですので、まずは予防に努めましょう。
対策としては、一回の食事量を少なくするために食事の回数を3回に分ける、早食い防止の食器を使う、食器の高さを上げる、食事後は安静にさせるなどがあります。緊急時にはすぐに、動物病院を受診できるように家族で情報を共有しておきましょう。
土佐犬のしつけ・飼い方
土佐犬は、あらゆるしつけや訓練を行わなければならない犬種です。
運動は長い散歩を毎日おこなって
土佐犬は豊富な運動量が必要な犬種ですが、関節に負担をかけないように、激しい運動は必要ありません。
1日2回の1〜2時間ずつ、たっぷりと散歩してあげましょう。
土佐犬は、通りすがりの見知らぬ人や犬に反応してしまうことがあります。そのような場合は、トラブルを起こさないためにも、人のいない時間帯や場所で散歩をするようにします。
心配な場合は、口輪をして散歩に行くこともひとつです。放し飼いや、ドッグランでリードを外すと、事故につながる可能性があるので気をつけてください。
大型犬の訓練熟練者向きの犬の犬種
土佐犬のように警戒心や縄張り意識が強い犬種は、子犬の頃から社会性を身に付ける訓練が必要です。
本来は、怖がりな性格でもあるため、訓練が不十分であれば、恐怖心や不安感によってさまざまな問題が生じてしまいます。
一般的に、犬の訓練は毅然とした態度で行う必要がありますが、強引に行ったり、大きな声で怒るなどの行為が、土佐犬の攻撃性を引き出してしまう可能性があるため、土佐犬の飼育には訓練熟練者が向いています。
訓練士に依頼することもできますが、普段一緒に暮らす飼い主がリーダシップを取れなければ、土佐犬が安心して暮らせる環境づくりができません。
土佐犬を飼育するためには、この犬種に対しての十分な理解と、飼い主自身の技量と覚悟が必要です。
日常ケアをしながらコミュニケーションをとる
土佐犬はトリミングが必要な犬種では無いため、自宅で日常ケアをしっかりおこないましょう。
もしトリミングサロンでシャンプーをお願いしたい時は、大型犬の土佐犬を受け入れてくれるか事前に問い合わせる必要があります。
ブラッシングは、短毛種のためラバーブラシでマッサージをかねて行います。シワの間は、汚れが溜まりやすいため、お湯で濡らして固く絞ったタオルでよく拭いてあげましょう。
よだれが出やすいので、口元もこまめに拭いて、清潔に保ちます。
土佐犬は、爪が伸びるのが早いことが特徴で、また爪が硬いため、伸びすぎると割れたり肉球を傷つけたりする恐れがあります。爪の長さもこまめに確認しておきましょう。
土佐犬の歴史
土佐犬の歴史は古く、14世紀まで遡ります。
当時、現在の高知にあたる土佐犬藩で、藩士の士気を高めるために闘犬が行われており、そこで用いられていたのが、現在の四国犬です。
四国犬は、その地方の土着犬で、「土佐犬」と呼ばれていました。
現在の土佐犬は、大型の闘犬種である「闘犬土佐犬」を指すため、別の犬種であり似ているところはありません。
しかし、飼い主に忠実であること、負けん気が強い性格であることは共通していました。
この四国犬をベースに、闘犬として強くなることを目的に改良が重ねられ、現在の土佐犬ができました。
江戸時代後期から明治時代にかけて、海外から犬が輸入されるようになると、世界一の闘犬を目指すべく、土佐犬の大型化が本格化します。
オールド・イングリッシュ・マスティフ、ブルドッグ、セント・バーナード、ジャーマン・ポインター、ブルテリア、グレート・デーンなど闘犬の歴史をもつ犬や、体格が大きい犬との交配によって改良が加えられました。
中でも、オールド・イングリッシュ・マスティフの影響が色濃く残っています。容姿もよく似ており、海外では、土佐犬のことを「ジャパニーズ・マスティフ」と呼ぶことがあります。
闘犬は、動物愛護の観点から、19世紀にはヨーロッパを中心に禁止になりました。しかし日本においては、文化財や観光資源としての側面から禁止になっていないことが実情です。
現在でも、闘犬の是非については議論が続いています。
1933年に全国的な組織として土佐犬普及会が発足し、1935年に品種を固定し血統書を発行しました。1937年の支那事変の際は土佐犬普及会が闘犬による慰問を行いました。
1942年頃から、食糧事情悪化による飼育難で数が激変し、高知県では計13頭の土佐犬の疎開を断行します。本土空襲激化により終戦頃には高知県内の土佐犬闘犬は絶滅してしまいました。
戦後直後の、土佐犬闘犬の数は東北にオス10頭とメス5、6頭、九州に2頭でした。1994年5月20日「土佐犬闘犬」として高知県天然記念物に指定されます。
土佐犬の値段価格
土佐犬は日本ではペットショップでは見かけることはない犬種です。
国内ブリーダーも存在していますが、数は少なく、購入を希望している場合はまずは見学してみるといいでしょう。
購入価格は、20万円前後ですが、親犬が展覧会などで入賞経験がある血統の場合は50万円近くの値段になることもあります。
土佐犬は、イギリスや、フランス、ドイツなどの国では、土佐犬闘犬などの闘犬を、「危険犬種」として、ペット飼育の規制対象に指定されており、飼育可能な場合であっても、口輪の装着など厳重な管理が義務付けられています。
日本においても、飼育する場合には安全に配慮して鋼鉄製の檻に入れ、建物の外周や出入口を鉄柵で囲い、猛犬注意のステッカーを貼るなどして厳重な管理が求められています。
さらに、飼い主のこの犬種に対する十分な理解と、運動量に付き合える体力と時間、飼育を維持するための経済力など、さまざまな条件を満たした上で飼育を検討しましょう。
土佐犬に興味を持たれた方は、ぜひ本記事を参考にしていただければと思います。