ボルゾイの基礎情報
・日本語表記:ボルゾイ
・英語表記:Borzoi
・原産地:ロシア
・発生:自然発生
・種類:視覚ハウンド
・サイズ:大型犬(68cm〜85cm)
・体重:オス 25kg~46kg、メス 34kg〜47kg
ボルゾイの性格・特徴
ボルゾイは、スラリと長い脚、小さく細身の顔立ちに、気品を感じさせる犬種です。普段は落ち着いていて、歩く姿は馬のように優雅で美しいことがこの犬種の魅力です。
ボルゾイの性格
ボルゾイは、物静かで優しく、サイトハウンドの中では一番人懐っこい性格です。
観察力や感受性が強く、個体によっては臆病や神経質なこともあります。しかし、争い事を避けるタイプのため、他の犬とケンカになったり、見知らぬ人に対して攻撃的に吠えたてることはありません。
飼い主や家族に対しては愛情深く、常に寄り添っていることを好む、甘えん坊な犬種です。
人間の指示通りに動くよりも、自分で判断して行動する傾向があり、「しつけにくい犬」「頭の悪い犬」という誤解を受けることがありますが、非常に賢く、人の気持ちを理解する力があります。
ボルゾイの特徴
ボルゾイは貴族的で優雅な外見ですが、性格はひょうきんなところがあり、サイトハウンドの中では一番人懐っこい性格です。
体は大きく、細く引き締まると同時にがっしりしており、ごくわずかに引き伸ばされたような容姿をしています。
丈夫でしっかりとした骨格ですが、決して重量感はありません。前後の脚は、長くすっきりとしていますが筋肉質です。
頭部は長くひく締まっており、幅は狭く、高貴な印象を受けます。頭の頂は真っ直ぐですが、はっきりしたオクシパッド(後頭部)に向かってわずかに傾斜しています
耳は小さくしなやかで、よく動き、目の上の頭部後方についています。両耳の先端は接近していますが、下に向かって首に密着しています。
家族を癒してくれる優しい大型犬
ボルゾイは、普段は物静かでゆったりとしていて、吠えることはほとんどありません。
飼い主にはしゃいで飛びつくなど、犬らしい振る舞いが少なく、飼い主や家族に静かに寄り添い癒してくれます。
家の中では、穏やかで落ち着いて過ごしますが、散歩中などにネコや鳩など動く小動物に反応し、なめらかで俊敏性のある走力を発揮し、追いかけようとします。
ボルゾイの毛色・目の色
ボルゾイは、シルキー(絹糸状)で、やわらかく、しなやかでウェーブが短いカールになっています。
頭部、耳、前後の脚の毛は艶がありサテンのようで、短くボディに密着して生えています。ボディの被毛はかなり長く、ウェービーで肩甲骨や尻の被毛はより細かいカールになっています。
あばらや大腿の被毛はより短く、フェザリング(羽毛状の飾り毛)やブリーチ(腿の後ろの飾り毛)、尾の飾り毛を形成する毛はより長くなっています。
絹のように細く、ウェーブがかった上毛と、寒さに耐えうる下毛をもつダブルコートで、週に2〜3回以上はブラッシングが必要です。
毛色は、ブルーとブラウン(チョコレート)と、この色調を除いたあらゆる毛色の組み合わせがあります。単色やパイド(パーティーカラー)でも良いとされています。
主な毛色は、ブラック、ホワイトの単色、レモン、グレー、ブリンドル、シルバー、ゴールド、セーブルとこれらとホワイトの組み合わせがあります。
マールカラーは、ジャパンケネルクラブでは公認されていない毛色です。
ボルゾイの目は、大きく表情豊かで、色はダーク・ヘーゼルまたは、ダーク・ブラウンです。
ボルゾイの鳴き声
ボルゾイは、大人しく穏やかで、争いを好まない性格のため、吠えることはほとんどありません。
鳴き声は、大型犬らしい大きな鳴き声ですので、むやみに吠えるようになると、近所迷惑になる声です。
ボルゾイは、神経質で繊細な個体が多く、そのまま成犬に成長すると、見知らぬ人に対して、恐怖心から吠えてしまうことがあります。
子犬の頃から、家族以外の人にもたくさん可愛がってもらうといいでしょう。神経質な場合は、さまざまな経験をさせて、多くの刺激に触れることが大切です。
毎日同じ散歩コースではなく、週末は郊外などに出かけて、一緒に過ごしましょう。
ボルゾイの寿命・病気
ボルゾイの平均寿命は9歳〜14歳で、大型犬の平均寿命は13年ほどなので、やや短命な犬種です。
網膜形成不全(網膜異形成):網膜や脈絡膜、強膜が正常に育たない疾患。
ボルゾイは遺伝的に、この疾患を発症しやすく、重度の場合は、網膜剥離を引き起こすことがあります。また、ボルゾイに多い疾患のため、「ボルゾイ網膜症」とも呼ばれます。
この疾患は、先天的に網膜が欠如しており、症状には見えにくさがあります。とくに、夕方から夜に目が見えにくそうにしている様子があれば、獣医師に相談してください。
外耳炎:鼓膜から、耳の穴までの外耳に炎症が生じる疾患。ボルゾイは、垂れ耳で外耳炎を発症しやすい犬種です。
初期のうちは、洗浄や点耳薬による治療で、完治しますが、重症化すると、耳が聞こえづらくなったり、痛みが生じます。
高温多湿な夏場は、外耳炎を発症しやすいため、とくに注意してください。症状には、「頭をよく振る」「耳の後ろのあたりを掻く」「耳の中の匂いがする」「ベタベタした耳垢が出る」などがあります。
非加齢性白内障:水晶体の一部もしくは全体が白く濁る疾患。ボルゾイは、遺伝的に目の疾患に罹患しやすく、白内障も注意が必要です。
遺伝的な白内障は、非加齢性白内障ともいい、加齢による白内障と比べて進行が非常に早いことが特徴です。
白内障の初期症状はわかりづらいため、気がついたら進行していることが多いです。予防法はないため、親犬の病歴や、遺伝子検査が大切です。迎え入れる際には確認するようにしてください。
進行性網膜萎縮:網膜が徐々に薄くなり最終的に失明する疾患。ボルゾイは、遺伝的に本疾患を発症しやすい犬種です。
初期症状としては、夜盲という暗い環境下での視力が著しく低下します。昼間は視力に異常が表れないため、気がつきにくいです。
夕方や暗い部屋で、見え方に異常がないか確認しましょう。遺伝性疾患のため、予防法はありませんので、迎え入れる際に遺伝子検査の結果や、親犬の病歴を確認するようにしてください。
胃捻転:胃が捻転しショックなどの症状を起こす疾患。ボルゾイは、胸がたいへん深い体型をしているため、胃が拡張して捻転を起こしやすい犬種です。
捻転した状態が続くと、大きな静脈も捻れてしまい、全身に血液が回らなくなりショック状態に陥ってしまいます。命にも関わる疾患のため、早急な処置が必要です。
症状には、不安そうな様子で室内をウロウロする、吐きたくても吐けない、急にぐったりする、大量のよだれを垂らすなどがあります。これらの症状がみられたら、早急に近くの動物病院を受診しましょう。
胃捻転が起こらないように、一回の食事量を少なくするために食事の回数を3回に分ける、早食い防止の食器を使う、食器の高さを上げる、食事後は安静にさせる、などの方法で予防するようにしてください。
ボルゾイのしつけ・飼い方
ボルゾイは、飼い主や家族を癒し寄り添ってくれる素晴らしい家庭犬です。ボルゾイの適切な飼育方法をご紹介します。
屋外ではたっぷりと体を動かして
ボルゾイは室内ではのんびりとくつろいでいることが多いですが、外では走ることが大好きな犬種です。
運動量は非常に多く、毎日1〜2時間以上の散歩が必要です。ただ歩くような散歩ではなく、一緒にジョギングしたり、自転車で並走して、走らせてあげましょう。
ドッグランや広い場所で自由に走り回れる環境が理想的ですが、逃走すると追いかけることが困難なほど足が早いため、訓練が完了するまではロングリードで走らせてあげましょう。
跳躍力もあり、ドッグランのフェンスを飛び越えることがないように注意してください。
狩猟本能に注意してリードはしっかり握っておく
ボルゾイは、普段は穏やかで落ち着いており、非常に優しい犬種ですが、狩猟本能がまだ残っており、ネコや鳥など、動く小動物に反射的に体が反応してしまいます。
散歩中に、急に走り出すこともあるため、リードはしっかり持っておく、ダブルリードにしておく、慣れるまでは、力のある成人男性がリードを持つなど注意してください。
しつけしやすいがプライドが高い一面も
ボルゾイは、賢く、人の気持ちを理解する能力が高いため、本来であればしつけしやすい犬種です。
しかし、ややプライドが高く、賢いあまり自分で考えて行動しようとするため、しつけが難しいこともあるようです。
こうした独立心が芽生える前の、子犬の時期に信頼関係をしっかりと築き、しつけや訓練を完了させておくことが大切です。
迎え入れたら、すぐにしつけを開始するようにしてください。
ボルゾイの歴史
ボルゾイは、以前はロシアン・ウルフハウンドと呼ばれていた、ロシア原産のサイトハウンドです。
かなり古い時代のサイトハウンドと、ロシアに土着していた猟犬が交雑して生まれたと考えられています。
ボルゾイとは、「俊敏」を意味するロシア語で、名前の意味する通り、走ると非常に速く、速度は時速50kmにもなります。
当時は、オオカミ狩りの猟犬として、ロシア帝国の貴族に飼育されていました。
そのため、ロシア革命によって、貴族の象徴であったボルゾイは、民衆の標的にされ多くが命を落とします。
しかし、革命前に海外の王侯貴族に進呈されていたボルゾイが生き残っていたため、ブリーディングを行い、再び純血種として復活を遂げました。
1892年にアメリカンケネルクラブ、1914年にイギリスのケネルクラブに登録されました。当時は、ロシアン・ウルフハウンドと登録されましたが、1936年にボルゾイと改名されます。
1992年に、アメリカのマジェンカケネルから純白のベルサリウスという名の、オスのボルゾイが来日し、日本でボルゾイの愛好家を増やすきっかけを作りました。
現代のボルゾイたちは、美しく気品溢れる容姿で、世界中のドッグショーに出場している他、ルアーコーシングを使ったドッグレースでも使われるなど、ハウンドドッグとしての性質もしっかり残しています。
ボルゾイの値段価格
ボルゾイは、日本においても愛好家の多い犬種です。
ジャパンケネルクラブによると、例年犬籍登録が行われており、2021年には359頭のボルゾイが登録されています。
ブリーディングも各地で行われているため、自分に合った気質の子を迎え入れることができます。
子犬の価格は20万円から35万円程度で、チャンピオンの血統をもっていると高価になります。
ボルゾイは、穏やかで優しく飼い主を癒してくれる存在です。体も大きく、運動量が豊富なことから、簡単には飼育できる犬種ではありませんが、日常的に体を動かすことが好きな方にはぴったりの家族となってくれるでしょう。
本犬種に興味を持たれた方は、ぜひ本記事を参考にしていただければと思います。