ナポリタン・マスティフの基礎情報
・日本語表記:ナポリタン・マスティフ
・英語表記:Neapolitan Mastiff
・原産地:イタリア
・発生:自然発生
・種類:使役犬
・サイズ:大型犬(60〜78cm)
・体重:オス60kg~70kg、メス50kg~60kg
ナポリタン・マスティフの性格・特徴
ナポリタン・マスティフは、イタリア原産の闘犬で、闘犬が禁止されてからは、番犬や警察犬、家庭犬、ショードッグとして活躍しています。
ナポリタン・マスティフの性格
ナポリタン・マスティフは、強面の外見とは反対に、温和で優しい性格をしています。
飼い主や家族に対して従順でしつけがしやすいだけではなく、マスティフ系の中では比較的温厚であり、子供がいても飼育できる犬種です。
防衛本能があり勇敢ですが、攻撃的ではありません。依存心があまりなく、マイペースな一面もあります。恐れ知らずで行動が大胆になる時もあります。
オスは、勇敢さと忍耐強さを持っています。メスは、落ち着いていて優しい性格をしています。
ナポリタン・マスティフの特徴
ナポリタン・マスティフは、全身の皮膚にシワがあり、重厚感のある見た目が特徴です。
胸が深く、発達した筋肉におおわれています。一見怖そうですが、非常に温厚で従順な性格をしているところが魅力的な犬種です。
「デューラップ(首の下のたるみ)」は、子犬の頃にはほとんど見られず、成長と共に目立つようになります。
歩く様子が、一歩一歩踏みしめることからライオンやクマのようといわれることが多いです。
一度にたくさん出産する犬種で、イギリスのナポリタン・マスティフは一度に24匹の子犬を出産し、ギネスブック公認の記録に認定されています。
最も恐ろしい外見をもつ犬
ナポリタン・マスティフは、20世紀にほとんど全滅していましたが、イタリアの芸術家によって改良が進められました
当時の改良では、見た目の恐ろしさを重視したといわれています。
そのため、ナポリタン・マスティフは、最も恐ろしい外見をもつ犬種として有名になりました。見た目に反して、性格は温厚で気質は安定しています。
マイペースで頑固な一面もあることから、あまり体を動かすことを好まず、主人からの命令がない限り、自分の居場所でどっかりと寝そべっていることが多いです。
健康維持のためにも、規則正しく散歩に連れていきましょう。
ナポリタン・マスティフの毛色・目の色
ナポリタン・マスティフの毛は短く密に生えており、なめらかな手触りです。
毛色は、ジャパンケネルクラブによると、ブラック、フォーン、グレー、鉛のようなグレー、ブラウン、ディープ・フォーン(レッド・ディアー)、が好ましい色とされており、ブラックの毛色が人気があります。
時に、胸や指趾の先端に小さなホワイトの斑がみられます。全ての被毛において、ブリンドルも許容され、ヘーゼルやドープ・グレー、イザベラのシェードも許容されます。
被毛は短いため、ケアはラバーブラシでマッサージを兼ねて週に1回程度行う程度でよいでしょう。短く堅い被毛は、抜けた時にクッションや洋服に刺さりやすい特徴があります。
目は広く離れてついています。被毛の色と比較すると、瞳の周りの色はより濃くなっています。
ナポリタン・マスティフの鳴き声
ナポリタン・マスティフはおとなしい性格をしているため、あまり吠えることはありません。
しかし、番犬や護衛犬のルーツがありますので、警戒心が強くなると、自宅に見知らぬ人が訪問した際に吠えることがあります。
飼い主がリーダーシップをとり、服従訓練を行うことで、無駄吠えをなくし、警戒吠えをしてもすぐに鳴き止ませることができます。
ナポリタン・マスティフは、見た目が迫力のあるため、吠えられた人は恐怖を感じてしまいます。警戒心が強くならないように、子犬の頃から、しつけや訓練により社会性を身につけさせることが必要です。
屋外で飼育する場合は、通りの人に反応する可能性があるため、通りが視界に入らないようなところに犬舎をおいてあげるといいでしょう。
ナポリタン・マスティフの寿命・病気
ナポリタン・マスティフの寿命は、8歳〜10前後で他の大型犬の寿命と比較すると少し短い傾向にあります。
命に関わる疾患や、遺伝性の疾患は多くありません。毎日のケアで、長生きすることも可能な犬種です。
動物病院はなるべく子犬の時にホームドクターを決め、獣医師と信頼関係を築き、警戒心を抱かないように気をつけなければなりません。
股関節形成不全:股関節が噛み合わないために関節が炎症を起こす疾患。ナポリタン・マスティフは成犬になるまでに18ヶ月から24ヶ月かかるため比較的ゆっくりと成長します。
長い成長期に関節に過度な負荷がかかると、この疾患を発症しやすくなります。
元々運動が好きなタイプではないので、過度な運動を心配する必要はありませんが、動かないことで肥満になり、関節に負荷がかかることが考えられます。運動は規則的な散歩で行いましょう。
胃捻転:胃が捻転しショックなどの症状を起こす疾患。大型犬に多い疾患で、体が大きく胸が深いナポリタン・マスティフ犬も十分に注意しなければなりません。
発症しやすいタイミングは、夕食後で、原因として考えられることは、食事後にすぐに運動させるなどがあります。胃捻転が起きてしまうと、すぐに動物病院で処置を行わなければ、命に関わる疾患ですので、まずは予防に努めましょう。
対策としては、一回の食事量を少なくするために食事の回数を3回に分ける、早食い防止の食器を使う、食器の高さを上げる、食事後は安静にさせるなどがあります。
チェリーアイ:目頭にある第三眼瞼(瞬膜)が飛び出してしまう疾患。第三眼瞼は下まぶたの内側にあり、眼球を保護したり、涙を分泌したりする大切な役割を担っています。
普段は目頭の中に隠れているため、見えることはありません。チェリーアイは、第三眼瞼の根本の付け根が緩むことにより起こります。ナポリタンマスティフは、ほとんどは1歳未満の子犬で発症することが多いです。
目を気にして、手足で擦ってしまい、結膜炎を併発してしまったり、涙の量が増えることで、涙やけを起こすことがあります。
本来は炎症を抑える点眼薬を持続的に使ったり、目を擦らないようにエリザベスカーラーをつけるなどの対応がとられますが、ナポリタン・マスティフは体も大きく力も強いため、エリザベスカーラーはつけられない可能性が高いです。
外科的治療で、飛び出した第三眼瞼を正常な位置に戻して縫い合わせることも可能ですが、再発する可能性があります。
皮膚炎:細菌感染や、アレルギーによって皮膚に炎症が生じる疾患。ナポリタン・マスティフは全身にシワが多い犬種です。シワに汚れが溜まりやすいため、お湯で硬く絞ったタオルでよく拭き、清潔に保ってあげましょう。
被毛のケアは、楽な方ですが、ラバーブラシで週に1回はブラッシングし皮膚状態も確認しましょう。また、ナポリタン・マスティフの口元の皮膚が弛んでいることからよだれもとても多いです。
よだれをそのままにしておくと、皮膚炎を起こしたりニオイの元になるので、タオルなどでこまめに拭き取り、清潔に保つようにしましょう。
ナポリタン・マスティフのしつけ・飼い方
ナポリタン・マスティフは、温厚な気質ではありますが、体が大きく力も強いためしっかりとしつけや訓練を行わなければなりません。
体を動かすことがあまり好きではない
ナポリタン・マスティフは運動をあまり好まないため、激しい運動は必要ありません。
無理に過度な運動をさせると、関節を痛めますので気をつけましょう。放っておくと、自分のお気に入りの場所でずっと寝そべっていますので、規則正しく散歩に連れていきましょう。
本来は体力のある犬種ですので、1日2回の1時間ずつの散歩が理想的ですが、嫌がるようでしたら、短くしても大丈夫です。
自宅の庭で、引っ張り運動やボールなどで遊んであげてください。
飼い主には従順でしつけは入りやすい
ナポリタン・マスティフは力が強い犬種のため、子犬のうちからしっかりと訓練を行い、リードトレーニングなどは完了させておきましょう。
飼い主に対しては従順ですが、頑固な一面があるため、初心者には不向きな犬種です。
温厚な性格のため、強く叱りつけるような強引な訓練ではなく、たくさん褒めてあげる方法で行ってください。
まずは飼い主が、リーダーと認められるために、信頼関係を築き服従訓練を行いましょう。しっかりしつけを行えば、家族に小さな子供がいても優しく接してくれます。
ナポリタン・マスティフのライフプランを知っておくこと
ナポリタン・マスティフは超大型犬の中でも比較的短命な犬種です。個体差はありますが、早ければ6〜7年、長くても10年程度です。
しかし、早くて5年後くらいに、大きな体のナポリタン・マスティフの介護が始まるかもしれないことを認識しておく必要があります。
大型犬のため、医療費もかかりますし、通院や介護のための時間や労力がかけられるのか、家族の協力が得られるのか十分に検討してから、この犬種を迎え入れるようにしましょう。
ナポリタン・マスティフの歴史
ナポリタン・マスティフは、イタリアン・マスティフとも呼ばれ、古代ローマ時代に戦争や見世物に使われた大型犬を祖先犬とし、イタリアの南部で発展を遂げた犬種です。
祖先犬となった大型犬の作出にはアレクサンダー大王が関わったともいわれています。
紀元前4世紀頃、アレクサンダー大王は、従来の大型犬にインド産の短毛種を掛け合わせ「Molossus」と呼ばれる犬種を作り戦争やコロシアムにおける闘犬などに用いました。
紀元前54年にローマがイギリスを統治すると、この「Molossus」は土着の大型犬と交配し、現在のナポリタン・マスティフの原型が出来上がったと考えられています。
その後、数世紀にわたり、イタリア南部に暮らす農夫たちがこの大型犬の選択繁殖を繰り返し、巨大な体や弛んだ皮膚などの特徴を守ってきました。
この背景には、番犬としての活躍を期待して、わざと恐ろしく警戒心の強い犬を作り出したいという事情があったようです。
1946年にナポリで開かれたドッグショーにおいて、ナポリタン・マスティフ8頭が出場し、ショードッグとしての人気を再興しました。
第二次世界大戦後は、一時絶滅の危機に瀕しましたが、1948年、イタリアの画家でありナポリタン・マスティフの父とも称されるピエロ・スカンジアーニが血統の維持に尽力し、同時に改良を進めこの犬種のスタンダードを作りました。
この改良の時にも、見た目の恐ろしさを維持するように行われていました。
結果、翌1949年にはイタリアンケネルクラブと国際畜犬連盟FCI ( Fédération Cynologique Internationale ) で公認され、1970年代になるとスタンダードが改訂されてヨーロッパやアメリカにまで広まりました。
2004年にはアメリカンケネルクラブでワーキンググループとして公認されました。
ナポリタン・マスティフの値段価格
ナポリタン・マスティフは日本ではペットショップでは見かけることはない犬種です。
国内ブリーダーも存在していますが数は非常に少なく、購入を希望している場合は、まずは見学してみるといいでしょう。
映画「ハリーポッター」でハグリッドが飼育していた「ファング」という名の犬は、ナポリタン・マスティフが使用されていたこともあり知名度が上がりました。
購入価格は、20万〜30万円前後でオスの方が高価になる傾向です。
親犬が展覧会などで入賞経験がある血統の場合は、さらに高価な値段になることもあります。
ナポリタン・マスティフは、マスティフ系の中でも温厚で飼育しやすい方とはいわれていますが、簡単に飼育できる犬種ではありません。
この犬種に対する十分な理解と、運動量に付き合える体力と時間、生涯飼育を維持するための経済力など、さまざまな条件を満たした上で飼育を検討しましょう。
ナポリタン・マスティフに興味を持たれた方は、ぜひ本記事を参考にしていただければと思います。