
エストレラ・マウンテン・ドッグの基礎情報
・日本語表記:エストレラ・マウンテン・ドッグ
・英語表記:Estrela Mountain Dog
・原産地:ポルトガル
・発生:自然発生
・種類:使役犬
・サイズ:大型犬(62~72cm)
・体重:オス40kg~50kg、メス30kg~40kg
エストレラ・マウンテン・ドッグの性格・特徴
エストレラ・マウンテン・ドッグは、ポルトガル原産の最古の犬種で、オオカミと遜色ないほど力強く大きな体をしています。
エストレラ・マウンテン・ドッグの性格
エストレラ・マウンテン・ドッグは、知的で迅速に反応できることから、軍用犬や警察犬として活躍していました。
与えられた仕事はきちんとこなし、主人への献身と忠誠心がこの犬種の特徴です。警戒心が強く、時折みせる見知らぬ人に対する脅すような不信感が印象的です。
独立心が強く、飼い主以外には友好的ではないため、家庭犬として飼育するためには、子犬の時から社交性を身につける必要があります。
また、服従訓練が不十分ですと、成人男性でも成犬をコントロールができなくなりますので、徹底したしつけと訓練が必要です。
エストレラ・マウンテン・ドッグの特徴
エストレラ・マウンテン・ドッグは、マスティフ・タイプのモロシア犬です。
ボディは輪郭がわずかに膨らみを帯び、引き締まっていて素朴感があります。均整がとれた体は完璧といわれるほど、全体が調和してまとまっており、長期間に渡って犬種の純粋性が保たれてきたことの証となっています。
表情は落ち着いていますが、知覚が鋭く活き活きとしています。
羊をオオカミから守るための護衛犬
エストレラ・マウンテン・ドッグはオオカミと戦えるほどに力強く、より大きくなるように改良を加えられた犬種です。
一時期は、ジャーマン・シェパードと交配されていたこともありましたが、この犬種の遺伝子が薄まり、攻撃性が高くなってしまいました。
この交配は愛犬家達に反対され、すぐに戻し交配が行われ、エストレラ・ドッグを純血に戻したという過去があります。
しかし、この犬種は元々、勇猛果敢で警戒心が強く友好的ではありません。しっかりしつけや訓練を行わなければ家庭での飼育が難しいことを理解しなければなりません。

エストレラ・マウンテン・ドッグの毛色・目の色
エストレラ・マウンテン・ドッグの毛色は、フォーン、ウルフ・グレー、イエローの3色です。
ジャパンケネルクラブによると、どの毛色にも共通していることは、顔と耳がブラックであることです。また、いずれも単色もしくはホワイトのマーキングのみ認められています。
被毛の手触りは、ヤギに似ているといわれており、下毛が密に生えていることから耐寒性があります。
この犬種には、ロングコートタイプとショートコートタイプの2種類がいます。ロングコートタイプの場合は、首周りに特徴的な豊なた被毛があり、たてがみのようです。
このたてがみには、耐寒性と、狼などの敵から急所の首を守るという役割があり、厳しい生活環境に適した体に進化したものと考えられています。
エストレラ・マウンテン・ドッグの鳴き声
エストレラ・マウンテン・ドッグの鳴き声は、体の大きさに見合った、大きな鳴き声をしています。
番犬としての名残から、見知らぬ人に対しては、非常に警戒し家族や、テリトリーに脅威がおよんでいると感じた時は、吠えて威嚇します。
攻撃性はありませんが、大切な家族を守りたい一心で、警戒心を強めてしまう時があります。子犬のうちに、たくさんの人に自宅で触れ合ってもらい警戒心を解いてあげましょう。
子犬の時は吠えなくても、成長と共に警戒心が強くなることもあります。困った時には、近隣トラブルなどになる前に、専門の訓練士にアドバイスをもらうといいでしょう。
エストレラ・マウンテン・ドッグの寿命・病気
エストレラ・マウンテン・ドッグの寿命は、10歳から14歳前後で超大型犬としては長生きの犬種です。
股関節形成不全:股関節が正常に形成されず、歩行に異常が現れる疾患。大型犬に多いこの疾患は、エストレラ・マウンテン・ドッグにも注意が必要です。
エストレラ・マウンテン・ドッグは成長期に発症することが多いため、歩き方に異常を感じたら、動物病院を受診しましょう。
成長するにつれ、落ち着いていきますが、子犬の時はやんちゃな性格のため、過度な運動を行い関節に負担をかけないように気をつけましょう。
たまに歩き方がおかしいと感じる時、動物病院でも同じように歩いてくれない可能性がありますので、前、横、後ろの三方向から動画を撮り、病院に持って行くと、適切な診断がされやすいです。
肘関節形成不全:肘関節が正常に形成されず、歩行に異常が現れる疾患。大型犬に多いこの疾患は、エストレラ・マウンテン・ドッグにも注意が必要です。
股関節形成不全同様、成長期に発症することが多いため、歩き方に異常を感じたら、動物病院を受診しましょう。それ以外にも、運動不足や食生活が原因による肥満も原因のひとつになります。
最初は、一時的な足を下につけられない歩き方(跛行)から始まります。慢性化する前に動物病院で診てもらいましょう。
熱中症:気温の高さにより、体温が下がらなくなり、脱水や高熱といった症状が現れる疾患。エストレラ・マウンテン・ドッグの原産地であるポルトガルの夏はカラッとしているため、日本の高温多湿の気候は体への負担が大きいです。
22度から23度を超えたり湿度が60%を超えるような夏場は、熱中症のリスクが高くなります。初期の段階では、ハァハァがいつもより多くなり、心拍数も多くなる、歯茎が真っ赤になるなどの症状が認められます。
さらに進行すると、足元がふらつく、大量の涎が出る、嘔吐や下痢、震える、ぐったりするなどの緊急性の高い症状になります。悪化すると後遺症がでたり、命に関わるため、夏場は涼しい時間帯に散歩を行うことはもちろん、車内に放置しないようにしましょう。
症状が出たら、水を飲ませる、体を冷やすなどの応急処置、動物病院への受診が必要です。

エストレラ・マウンテン・ドッグのしつけ・飼い方
エストレラ・マウンテン・ドッグは、利口な犬ですが、力が強い大型犬ということで、日本の家庭で飼育する場合にはさまざまな注意点があります。
独立心と警戒心が強い犬種
エストレラ・マウンテン・ドッグは、独立心が強いため、しつけや訓練は難しい犬種です。
他のペットと生活させる場合には、子犬の頃から仲良く過ごさせる必要があります。主従関係と信頼関係が築けた飼い主には、忠誠を誓いますが、それ以外の人に対しては友好的ではありません。
日本の家庭で飼育をする場合には、しつけや訓練が必須です。
ロングコートタイプは被毛のケアをしっかり行う
エストレラ・マウンテン・ドッグのロングコートタイプの犬種は、とくに被毛の毎日のケアが欠かせません。
換毛期や夏場は、抜け毛が増えることに加え、皮膚が蒸れやすくなったり、熱がこもりやすくなります。
密に生える下毛の抜け毛を、しっかり取り除くためにも、金属製のコーム状の器具を使用しましょう。
首周りのたてがみの部分は念入りに行ってください。
運動量は多いが激しい動きは避ける
散歩は1日2回の1時間ずつ行いましょう。
関節を痛めやすい犬種なので、ゆっくり長く歩いてあげる散歩が必要です。ジャンプを伴う激しい運動も避けたほうがよいでしょう。
原産地のポルトガルとは異なり、日本の夏は高温多湿になるため、熱中症には注意が必要です。
22〜23度を超えたり、湿度が60%を超えた場合は、散歩を控えましょう。夏場は涼しい時間帯を選んで短めの散歩に連れていきます。

エストレラ・マウンテン・ドッグの歴史
エストレラ・マウンテン・ドッグは古代よりエストレラ山脈(ポルトガル北部の高い山)に生息していました。
その起源は明らかではないものの、イベリア半島における最古の犬種の一つと考えられています。山の麓から頂上まで生息しており、現在でもこの地域で姿を見かけることができます。
長い間、羊飼いによってのみ飼育されていましたが、19世紀ごろになるとポルトガルの貴族から、この犬種の勇敢な性格と容姿のよさを気に入られ、ペット、屋敷の番犬としても飼育されるようになりました。
貴族たちからは非常に大切に飼育され、贅沢な餌を豊富に与えられていました。
これにより、エストレラ・マウンテン・ドッグの体格がさらによくなり現在の体高、体重のスタンダードができあがりました。
19世紀後半になると、牧羊の縮小や2度の世界大戦により、絶滅の危機にさらされます。
しかし、貴族に飼育されていたエストレラ・マウンテン・ドッグの多くが国外に持ち出され疎開し、種としての絶滅の危機を免れることができました。
さらに、ポルトガル国内の動乱期も生き残ることができたのです。
エストレラ・マウンテン・ドッグは牧羊犬、番犬として現在もなおこの地域に生息しているオオカミなどの野生動物から羊の群れを守っています。
ポルトガルの他の地域、主に国の中央部にも点在して生息していますが、この犬種の故郷はエストレラ山脈であり、子犬の時にエストレラ山脈からこの地域に連れてこられたか、エストレラ山脈地方出身のブリーダーによって繁殖されたかのいずれかです。
エストレラ・マウンテン・ドッグの値段価格
エストレラ・マウンテン・ドッグは日本ではペットショップで見かけることはない珍しい犬種です。ブリーダーも国内には存在していません。
エストレラ・マウンテン・ドッグは、現在アメリカ、ヨーロッパで飼育されていますが、いずれも実用犬やショードッグとして活躍していることが多く、一般家庭で飼育されていることはほぼありません。
日本においても、家庭での飼育は、この犬種の気質と特徴から難しいことがわかります。この犬種に興味がある方はドッグショーなどに足を運び会いに行ってみてはいかがでしょうか。
ぜひ本記事を参考にしてエストレラ・マウンテン・ドッグについて学んでいただければと思います。