グリーンランド・ドッグの基礎情報
・日本語表記:グリーンランド・ドッグ
・英語表記:Greenland Dog
・原産地:グリーンランド
・発生:自然発生
・種類:原始的な犬/スピッツ
・サイズ:大型犬(51〜68cm)
・体重:オス30kg~32kg、メス30kg~32kg
グリーンランド・ドッグの性格・特徴
グリーンランド・ドッグは、世界最古の犬種のひとつで、古代からイヌイットにより、運搬や狩猟の目的で用いられてきました。
グリーンランド・ドッグの性格
グリーンランド・ドッグは、精神的にも身体的にも強い、エネルギーにあふれた犬種です。
アザラシのみならず、ホッキョクグマを捕らえることもできるほど、高い狩猟能力と勇敢さをもっています。
一方で、人懐っこく誰に対しても友好的な一面があり、番犬には不向きですが、家庭犬としての適性は高い犬種です。
普段は物静かですが、仲間とそりを引く時には、一斉に吠えるなど情熱的な一面もあります。
グリーンランド・ドッグの特徴
グリーンランド・ドッグは、零下50度の極寒にも耐えられる分厚いコートと、サバイバル精神に長けた、非常に丈夫な体をしています。
食糧が十分に手に入らないような環境でも、生き延びることができるほど、頑健な犬種です。
また、体は骨太で、筋肉質の体型は、力強く、持久力も高いです。ピンと立った立ち耳と、ふさふさの垂れ尾が特徴的です。
凛々しい見た目と、すっきりとした顔立ちをしていながら、非常に人懐っこい性格がこの犬種の最大の魅力です。
誰にでもフレンドリーな性格はそり犬の特徴
そり犬は、仲間の犬やマッシャーと呼ばれる犬ぞり使いを合わせた、チームで行われます。
チーム内のコミュニケーションは大変重要ですが、犬ぞりを行う犬は、特定の人に愛着をもたないという習性があります。これは、マッシャーが変わっても、犬ぞりを行うために必要な習性です。
そのため、犬ぞりの犬たちは、誰に対しても人懐っこく従順で、協調性に長け温和なのです。
グリーンランド・ドッグも同様に、初めて会う人にもお腹をみせて甘えるなど、クールな見た目に反したフレンドリーな性格で、出会った人々を魅了しています。
グリーンランド・ドッグの毛色・目の色
グリーンランド・ドッグの被毛は、全身が白色のアルビノ以外のあらゆるカラーがあります。
単色や、パーティー・カラーなどさまざまなバリエーションがあり、中でもブラック&ホワイトやブラック&タンが多く見かけるカラーです。
被毛は中程度の長さで、ウールのようなアンダーコートと、全天候に耐えられるアウターコートからなる、ダブルコートです。
分厚い被毛は、寒さには非常に強いですが、暑さには弱く、日本の寒冷地でも暑さを感じるほどです。
被毛ケアは、週に1〜2回の念入りにブラッシングを行い、換毛期には週に2〜3回を目安に行うといいでしょう。お風呂は1カ月に1回程度行います。
普段の手入れは、やわらかくマッサージ効果の高いラバーブラシで行い、抜け毛の増える換毛期には、スリッカーブラシで下毛を取り除いたあと、コームやラバーブラシで整えてあげましょう。
グリーンランド・ドッグの目は両サイドが絞られた涼しげなアーモンド形をしており、目の色はダークです。
グリーンランド・ドッグの鳴き声
グリーンランド・ドッグは、普段は温厚で物静かな性格のため、吠えて威嚇したり、無駄吠えはしません。
しかし、犬ぞりを行うときに、仲間と興奮して一斉に吠えることがあります。鳴き声は、大きく迫力があります。
家庭犬として飼育する場合には、グリーンランド・ドッグの鳴き声に困ることはないでしょう。基本的には、物静かで、穏やかな犬種です。
見知らぬ人に対して、警戒心を抱かないため番犬としての適性はありませんが、誰からも愛される家庭犬になるでしょう。
グリーンランド・ドッグが吠えるようになるときは、運動不足によるストレスを疑ってください。運動欲求が非常に強い犬種ですので、とくに若い時は、十分な運動が行えないとストレスがたまってしまいます。
グリーンランド・ドッグの寿命・病気
グリーンランド・ドッグの寿命は、12歳〜14歳で、大型犬として比較的長生きな犬種です。
過酷な気候や、十分な食糧がない環境でも生き延びるほど丈夫で、病気に強いといわれ、この犬種特有の発症しやすい疾患もありません。
皮膚病:皮膚のかゆみや湿疹、脱毛などの症状があらわれる疾患。グリーンランド・ドッグは被毛の量が豊富で密に生えているため、皮膚が蒸れやすく、また寄生虫の住処になりやすいといわれています。
しっかりとブラッシングを行い、抜け毛を取り除かなければ、皮膚病になりやすいため、日常ケアは欠かさず行うようにしましょう。
ブラッシングの際には、皮膚状態も確認し、赤みや発疹などがあれば、すぐに動物病院を受診しましょう。
熱中症:体温調整機能が働かなくなり、高体温や脱水になることで生じる全身の疾患。グリーンランド・ドッグは、寒さには非常に強いですが、暑さには弱い犬種です。
寒冷地での飼育が適していますが、夏場は日が沈んでから散歩に行き、年間を通して室内飼育で温度や湿度の管理を徹底して行うようにしましょう。
熱中症の症状としては、激しく口で呼吸する、心拍数が早い、体温の上昇、よだれが多い、動きたがらない、口の中や下の色が赤いなどがあります。
ぐったりしていたり、チアノーゼ(口の中や舌が青紫色)になる、嘔吐や下痢などの症状は、危険な状態です。まずは、日陰や室内などの涼しい場所に移動し、首、脇の下、そけい部に保冷剤を当てるなどすぐに体を冷やすようにしましょう。
保冷剤がない場合には、水をかけ、扇風機などで風を当てることでも冷やすことができます。応急処置を行った後は、動物病院を受診するようにしてください。
グリーンランド・ドッグのしつけ・飼い方
グリーンランド・ドッグはそり犬としてのイメージが強い犬種ですが、家庭犬としても非常に高い適性があります。
日本での飼育は難しい
グリーンランド・ドッグは、日本での飼育例もありますが、残念ながら日本の気候には適さない犬種です。
暑さに弱いだけではなく、そり犬として運動欲求が強く、この犬種を飼育するためには、徹底した温度管理と、十分に体を動かすことができる環境の両方が必要です。
日本の寒冷地で、室内飼いなど、環境が整えば飼育も可能ですが、基本的には、グリーンランド・ドッグを日本で飼育することは難しいでしょう。
誰にでもフレンドリーだが主人の指示にのみ従う忠実な犬
グリーンランド・ドッグは、初めて会う人にもフレンドリーな態度で接してくれる犬種ですが、主人と認めた人の指示しか聞かない、忠実な犬種でもあります。
しつけや訓練を行う場合には、グリーンランド・ドッグにリーダーと認められる必要があります。長い時間一緒に過ごし、信頼関係を築いてから、しつけや訓練を行うようにしてください。
運動欲求が高い現役そり犬
グリーンランド・ドッグは、現在でも原産国のグリーンランドを中心に犬ぞりを行っている犬種です。
そのため、非常に運動欲求が高く、毎日の運動は欠かせません。散歩は1日2回1時間ずつ行うようにしましょう。
非常に力が強く、引く力もあるため、リードトレーニングは欠かせません。散歩以外にも、雪遊びや自然を感じられる場所で遊ばせると喜ぶでしょう。
グリーンランド・ドッグの歴史
グリーンランド・ドッグの起源は、紀元前2000〜3000年頃、イヌイット族がグリーンランドに持ち込んだスピッツタイプの犬種だと考えられています。
グリーンランド・ドッグは、太古の昔から人間とともに生活を共にしていました。
シベリア北部、アラスカ、カナダなど極寒の地に広がっていくと、ホッキョククマやアザラシ狩りに用いられるようになりました。
また、グリーンランドにやってきた捕鯨漁師、探検家、毛皮商人たちが、雪原を移動する際のソリ犬としても、この犬種を利用しました。
1860年〜1870年代には外来の犬が媒介した伝染病が広まり、グリーンランド原産の犬種は壊滅的なダメージを受けました。
とくに本犬種の兄弟種であるウエスト・グリーンランド・ドッグは頭数の減少が深刻で、純血種の繁殖が困難となり、すぐに絶滅してしまいました。
しかし、グリーンランド・ドッグはこのような過酷な状況でも生き残り、現在唯一のグリーンランド原産の固有種となっています。
グリーンランド・ドッグがイギリスに初めて持ち込まれたのは、1750年代と早く、ダーリントンで開催されたドッグショーでデビューを飾ったのは1875年のことでした。
1880年にイギリスケネルクラブから公認を受けます。
寒さに対する強さと、作業犬としての能力を買われ、ナンセンの北極探検や、アムンセンの南極探検に、そり犬として同行したことでも有名になった犬種です。
グリーンランド・ドッグの値段価格
グリーンランド・ドッグは、心身ともに健康で力強い犬種です。普段は物静かで、誰にでもフレンドリーに振る舞うところは、理想的な家庭犬といえます。
しかし、この犬種を日本で飼育するためには、環境を整えることが非常に重要です。
また、豊富な運動量に付き合えるアクティブでアウトドア好きな人が、飼い主には適しているでしょう。
現在、グリーンランド・ドッグのブリーディングは日本では行われておらず、ジャパンケネルクラブの犬籍登録数は2021年の時点で0頭です。
この犬種を迎え入れたい場合には、海外から輸入する必要があります。
現地のブリーダーともやりとりを代行してくれる、ペット輸入代行業者を介して輸入する方法があります。費用は、一般的に諸経費を含めて50万円程度です。
グリーンランド・ドッグに興味のある方は、グリーンランドや北欧などに旅行に行った際、犬ぞりを体験することで出会うことができるでしょう。
グリーンランド・ドッグの飼育について検討されている方は、ぜひ本記事を参考にしていただければと思います。